【映画】すずめの戸締まり

新海先生の新作、芹澤の話が出たのでお迎えしてきました。
先生、相変わらずの同人ムーブなんですよ。読者からの感想で新刊できました!じゃねぇんですわ。
大好きです。

■基本情報

公開日:2022/11/11
監督・脚本 :新海誠
制作    :コミック・ウェーブ・フィルム
配給    :東宝

■公式あらすじ

九州の静かな町で暮らす17歳の少女・鈴芽(すずめ)は、
「扉を探してるんだ」という旅の青年・草太に出会う。
彼の後を追って迷い込んだ山中の廃墟で見つけたのは、
ぽつんとたたずむ古ぼけた扉。
なにかに引き寄せられるように、すずめは扉に手を伸ばすが…。

扉の向こう側からは災いが訪れてしまうため、
草太は扉を閉めて鍵をかける“閉じ師”として旅を続けているという。
すると、二人の前に突如、謎の猫・ダイジンが現れる。

「すずめ すき」「おまえは じゃま」

ダイジンがしゃべり出した次の瞬間、
草太はなんと、椅子に姿を変えられてしまう―!
それはすずめが幼い頃に使っていた、脚が1本欠けた小さな椅子。
逃げるダイジンを捕まえようと3本脚の椅子の姿で走り出した草太を、
すずめは慌てて追いかける。

やがて、日本各地で次々に開き始める扉。
不思議な扉と小さな猫に導かれ、九州、四国、関西、そして東京と、
日本列島を巻き込んでいくすずめの”戸締まりの旅”。
旅先での出会いに助けられながら辿りついたその場所で
すずめを待っていたのは、
忘れられてしまったある真実だった。

■感想

芹澤……。
芹澤おまえ……。

公開当初、何を話してもネタバレになるので「芹澤」しか鳴けなくなった1人です。
諸々感じたり考えたり、この記事は完全にネタバレ&考察なので、見てない人は気をつけてくださいませ。

草鈴尊い

マジ尊い。可愛い。語彙力溶ける。

草太さんがちゃんと保護者なんですよ。成人として未成年の子をどこまでも守ろうとするし、危険から遠ざけようとするし、できるだけ巻き込まないようにしている、近年まれに見る「きちんとした大人」ですね。
すずめちゃんも、きちんとわかっててそれでも相手のために走っちゃうところがさぁ。
相手を大切にする似たものカップルでありつつ、冷静な草太さんと猪突っぽいすずめちゃんの2人をもっとたくさんみたい。
新海先生の女の趣味は大体合わないんだけどすずめちゃんは久々に握手したい。当初案では草太さん女性だったらしいけどそれも作っても良いんですよ。

すずめちゃん、ヒーローなんだよなぁ。
世界と好きな人を天秤に掛けて、好きな人を取る子が好きです。
すずめちゃんの場合は、311の被災者だからこそ、命の重みが違うのだと受けれど。
それまでは、生きるも死ぬも運次第。今自分が死のうと、明日友達が死のうと、それはある種「仕方の無いこと」「運が悪かっただけ」なんだろうけど、草太さんと出会って「死にたくない」「彼に生きていて欲しい」「彼と一緒にこれからも生きたい」と思えるようになったんだね。と。
あくまで関東済みの大きな震災にまだあったことのない平凡な人間の感想なんだけれど。

ダイジン可愛いよダイジン

何よりもまずダイジンが完全に人外神格仕草で可哀そう可愛い件。
滅茶苦茶ネタバレ100%だしパンフとかも見ずに思ったことの慣れ流し注意。あと無駄に長い。
話中での草太さんのおじいさんの話から、要石になった存在って最初から「神格持ちの神様」ではなく「後天的に神格を付与されたモノ」っぽいんですよね。
東の要石であるサダイジンは100年前の震災っていうと、おそらく関東大震災のあった1923年。宮崎に最近設置されたのであれば、西の要石であるダイジンは2016年の熊本自身の際におかれたんじゃないかなぁと。
そう考えるとダイジンは作中でも子猫として描かれているけれど、中身もめっちゃ幼い神様では?と思ったり……。
(猫の6歳というと成猫だけれど、神格化したら時間の流れも変わるだろうし外界と断絶してるしね)
見た目的にも、サダイジンとの神格としての貫禄の違いを見てよ。常世の姿が本来の姿なんだろうけれど、巨大な大狼神としてのサダイジンと、頑張ってもすずめちゃんを抱えられる程度の大型猫のダイジン。神として存在してまだまだ全然時間が経っていない、あかちゃん。赤ちゃん人外……。純真無垢な魂……。

ここで一度ダイジンの流れってざっくりいうと以下。
①過去に何らかがあり要石として封印される。
②ずすめの手によって要石の役割から解放される。
③自分を解放してくれたすずめちゃんに会いに行ったら、煮干しと水を与えて「うちの子になる?」と聞かれる。
④草太さんを椅子にして要石の役割を譲渡する。
⑤すずめちゃんを「開きそうな後ろ扉」に案内して回る。
⑥草太さんを要石にしたことですずめちゃんから絶縁される
⑦すずめちゃんの代わりに自身が要石に戻る

これ、上から見るとさぁ……。
作中語られるのは②以降だけれど、幼い人外神様の思考を想像するとオタク泣いた……。

> ③自分を解放してくれたすずめちゃんに会いに行ったら、煮干しと水を与えて「うちの子になる?」と聞かれる。
まずこれ、普通に「神格のあるもの、神様」に対して「食べ物=供物」を与えて「うちの子=神使・使い魔になる?契約する?」って聞いてるんじゃないの?
で、ダイジンはめちゃくちゃ嬉しそうな声で「うん!」って答えているの、完全に「契約します!」て意味でしょ。
今まで草太さん曰く「暗くて、寒くて、冷たい」場所にずっと一人で閉じ込められてて、自分をそこから出してくれた人からもらった言葉が純粋に嬉しすぎてダイジン契約しちゃったんだろうなぁって……。生まれて間もない、人間との付き合いをちゃんと理解していない人外によくあるやつー!!

特にダイジン、ちゃんと信仰を得られている訳でもなく、土着の神でもない、「ミミズを鎮めるための要石」という(手法はともかく)人工的に作られた「神格」なので、おそらく初めて自分自身に向けられた「好意」に耐性全くない赤ちゃんだよ。
すずめちゃんと契約後のふかふかつやつやの毛並みを見てよ。

> ④草太さんを椅子にして要石の役割を譲渡する。
これも、ダイジン的には絶対に悪気があった訳じゃないよね。
確かに「自分とすずめちゃんが一緒にいるには要石の役割は邪魔」「自分はすずめちゃんと二人でいたいので、よくわからん閉じ師(草太)は邪魔」なので「お前は邪魔」っていって要石の役割を、たまたまその場にいた草太さんに譲渡しようとしただけなんじゃないのかな?で、たぶんダイジン的には椅子に入れるつもりなんて無く、普通に自分と同じ「石」に変えようとしたんじゃないかなぁ。「要石」って字のごとく、「石」だろうし。

イレギュラーだったのはそのとき草太さんが「すずめちゃんの椅子」に座ってたこと。「すずめちゃんの椅子」って、「現世」と「常世」の狭間の存在だと思うんですよ。
あの椅子、「高校生のすずめが常世で4歳のすずめに渡す→4歳のすずめが常世から現世に持って帰る→高校生の時に草太が同化→常世に持ち込まれて要石になる→草太と分離後に高校生のすずめが常世で4歳のすずめに渡す(以下、無限ループ)」なので、「常世」と「現世」を行ったり来たり。どちらの世界の物体かも曖昧なものが、草太さんの真下にあればそりゃあ術に不具合も出るよ。鶏と卵だよ。

で、さらになまじ「椅子」なんていう「手足」の代用になるものが付いてて、自力で動いて追いかけてくるようなの、完全にダイジン的にも「想定外」でしょ。
人間的には「椅子になってる!よくわからん人外に呪詛された!」て驚くけど、ダイジン的には呪詛るつもり無く、むしろ「何で椅子になった??」でびっくりなのでは?だってダイジンはあくまで「すずめちゃんと一緒にいたいから、邪魔になる要石の役割を近くにいた邪魔になりそうな人間に譲渡した」だけなんですよ。

> ⑤すずめちゃんを「開きそうな後ろ扉」に案内して回る。
こっから先が、超絶人外ムーブかましすぎなのだけれど、まあ人外だから言葉足らずなの仕方ないね……。
おそらく、出会いの時にすずめちゃんが「扉を閉めていた」ことと自宅での草太さんとの会話から「すずめちゃんは扉を閉めたいんだ」と思ったダイジンが、「僕は開きそうな扉がわかるから、案内すれば良いんだ」と思っちゃったんでしょ?そうすれば「すずめちゃんは喜ぶ」と勘違いした行動でないか?
(ただし、すずめちゃんはダイジンの意図に気づいてない)

そして一応、ダイジンもすずめちゃんに危険が迫れば身を挺して守っているんですよ。ただ、「人がいっぱい死ぬね♡」「みんな死んじゃうね♡」って災厄ムーブがましてますが。
あれも、「(事実として)このままでは人がたくさん死んでしまいますよ」と言いたいのだと思うが、何故、あんなに、煽るんだ……。ダイジン……。「わーい、人がいっぱい死ぬね♡がんばれ♡がんばれ♡」とか、邪悪な、邪神やん。
でもこれ、生まれたばかりの情操教育ちゃんとできてない神格といわれたら「仕方ないね……」なんだけれど。つらい。サダイジンちゃんと後輩に色々教えてあげて……。
みんなちゃんと契約したとき・契約する前にお互いの自己紹介と契約内容については認識あわせしようね。

> ⑥草太さんを要石にしたことですずめちゃんから絶縁される
これもさ、ダイジン的には「出会ったときに自分を可愛いと言ってくれた。愛でてくれた!うちの子になるかきいてくれた!=すずめちゃんは僕のことが大好きなんだ!」が全部で、変えようのない事実だと思ってたんですよね。それに「すずめちゃんが僕のことをずっと追いかけてきてくれる=すずめちゃんも僕と一緒にいたいんだ!=僕のことが好きだからだ!」て感じだったのでは?自分からの一方的な愛に、相手も同じだけ返してくれると思い込む、幼い人外……。
だから、すずめちゃんから「大嫌い」っていわれた後がさぁ。
人からの信仰も愛も契約も得られない神の弱さよ……。それが元から弱い神様なので尚更……。
契約解消後もダイジンはすずめちゃんのこと大好きだから、健気に付いていく姿がね。
すずめちゃんとの会話がないのも、「もう話しかけないで!」てすずめちゃんに言われたことをちゃんと守っているのかと思うと、人外……。ごめんね、すずめちゃんはその台詞忘れてるよ。

> ⑦すずめちゃんの代わりに自身が要石に戻る
知ってるー!人外すぐそういうことするー!!
契約は破棄されてて、それでも自分は大好きだからそばにいたくて、守りたくて、守って。その結果、「自分の身代わりの草太さんの身代わりに大好きなすずめちゃんが要石になる(=自分の身代わりになる)」と決めたときに、自分が役目に戻るんですよ。模範的な良い神格人外ムーブ過ぎて100点あげちゃいます。
人間と自分が、「同じ好き」を向け合っていると信じて疑わない無垢な人外神格が、現実を知って、相手の一番は自分じゃないことを理解して、それでも相手のために自分を使って、すり減らして、消えてしまうの……。上位神の「そんなん知らねぇよ俺を受け入れない世界なら、世界の理を変えてやる」ってことができない、信仰からなる低級神にある(と個人的に思っている)神格ムーブに誰か名前を付けて欲しい。
「あなたのうちの子になれなかった……あなたの子になりたかった」って、もう最高の愛じゃん。無垢で、真っ新な愛情だよ。

すずめとダイジン、すずめと環さん

カウンターなんですよね。
すずめがダイジンに与えた言葉と態度と、すずめが環さんに与えられた言葉。(サダイジンの影響もありつつ)

言った方は忘れる言葉も、言われた方はずっと覚えてる。
だからこそ、発言には責任を負わないとね……。と改めて思いました。
しかしすずめちゃん、猫飼いとしては不用意に野良に餌あげたり「うちの子になる?」なんて言っちゃあかんで……と冒頭から思ってました。
無責任な餌付け捕獲は駄目絶対!

変わるもの・変わらないもの

『星を追う子ども』の「いつまでも過去に捕らわれててもいい」「大切なものは無くしても壊れてもいつまでも持って行け」「大人になんてならなくて良いんだよ」てムーブが好きだったので、あれに対する新海誠的アンサーなのかなぁと思ったり。
『星を追う子ども』が過去に執着する話なら、『すずめの戸締まり』はタイトル通り過去に戸締まり、区切りを付けて整理して前に進む一歩を踏み出すための物語。
過去を否定することなく、全てを受け入れて抱えて前に進み出す勇気と強さがまぶしいよ。
しかし「星を追う子ども」も、もう10年以上前の作品なのか。いつの間に……。

<枠外>汚れた人間の思考

私は駄目人間なので東京の後ろ扉が開いた時点で「草太さんを生贄にするくらいなら世界なんて滅んでしまえ!」と思ったし、最後も「東の草太さんと西のすずめちゃん、神使のダイジン・サダイジンの四人で常世でスローライフしてはいかが?」と思ってしまいました。

しかし、ダイジン・サダイジン、動物神が元になっていると信じたいけれど、なんとなくサダイジンは人間(それこそ閉じ師とか)だったのでは?と思ったり。
その場合、ダイジンって何なんでしょうね?闇が深そうですね。

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投稿者:

霜月 六花

おんな2人(人間一人と猫一匹)で極楽な生活を満喫中。 趣味の読書や映画の記録をゆるゆると綴っていきます。

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