【小説】ししりばの家/澤村伊智

ししりばの家「ぼぎわんが、来る」から続く「比嘉姉妹シリーズ」の第四作目。
今までが真琴をメインに添えている中で、初の長女・琴子の活躍が中心に描かれる本作。
彼女が何故今のような表情、無感動な人間となったのか、また幼い頃の彼女がどのような少女だったのかが見られます。

■公式紹介文

ようこそ、砂の散る奇妙な家へ――。エンタメ界の鬼才が放つミステリホラー
夫の転勤先の東京で、幼馴染の平岩と再会した果歩。しかし招かれた平岩家は不気味な砂が散る家だった。怪異の存在を訴える果歩に異常はないと断言する平岩。おかしいのはこの家か、それとも、わたしか――?

■書籍情報

出版社: 角川ホラー文庫
著者:澤村伊智
定価: 748円
発売日:2020年01月23日
判型:文庫判
ページ数:352
ISBN:9784041085431

■感想

ネタバレありの感想になりますので、未読・ネタバレなしで読みたい方はご注意ください。

今までの比嘉姉妹シリーズからは予想もできない琴子の姿に、まず驚かされました。
てっきり生まれたときから完璧で、霊能者として幼い頃から頭角を現していた。その上で弟妹との間に確執があったのかと思っていたので、その姿に純粋に意表を使えてました。
ギャップを知り残念だとか後ろ向きの感情ではなく、逆に生まれながらに完璧ではないことでの親近感というか、成長後の天然さもあり、より可愛く感じられて、普段の俗世との乖離・浮世離れ感からの愛しさ・萌え度アップ的な感じです。
琴子姉さん、マジ可愛い。

今作、主人公としては二人。
夫の転勤についてきて慣れない東京暮らしをする主婦の果穂。
そして比嘉琴子の小学校~中学校の同級生の五十嵐。

果穂の視点で描かれる、幼馴染みの平岩家との交流とその破綻と、五十嵐視点で描かれる幼少期の描写と琴子との再開後の描写が交互に描かれることで、その時間軸が曖昧となっている本書。
特に果穂と五十嵐と琴子の会話・体験が交互に描かれる五章~六章に関しては時間軸の曖昧さが顕著で、この先どうなるのか。なんとなくの予想は付きつつも、最悪の展開に対する予想が外れれば……。とページをめくる手を急かされるような気持ちで読み進めました。

澤村さんの作品、怪異の恐ろしさもその回避方法についても、明確な提示がないところが怖いです。

「事実の方が非現実的だ」という五十嵐の回想の通り、結局はどんな怪異も現実的な説明や解説はできやしない。説明したところで、根本的な理解や認識の範囲外だからこその怪異なんだろうな、と。

「砂」という事象、現象と「家の守神」というのは面白いなあ。
「などらぎの首」「ずうのめ人形」から感じていることですが、著者の描く怪異の原因や根本・行動理由が不明なことが怪異の怖さを増幅しているように感じます。
「ずうのめ」については作中で名称の由来など説明があったし、今回の「ししりば」についても説明はあったけれど、ひらがな四文字での言葉の使い方、上手だと思います。
だって比嘉姉妹シリーズ、タイトルからどんな話なのか、全くわからないんですもの。
わからないことへの恐怖とか不安感とか薄気味悪さとか、読者へ与える影響がわかっての命名なの、上手いとしか言えないですよね。人は未知のものに恐怖するのだな。

作中、「ししりば」という怪異から解放された五十嵐と、様々な面で狂わされた果穂。
物語冒頭では双方共に人生に行き詰まった状態だったけれど、終わりの時点では正反対の方向を向いている二人。
琴子が果穂に会いに行ってどうなるのか、「五十嵐×琴子」個人的には好きなのですが琴子の性格と時系列的に続編となる「ぼぎわんが、来る」以降で影も形もないことからあり得ないカプなんだろうな。作者としては語り終わった物語でしょうし。どこか短編などで、五十嵐さん出てきてくれると嬉しいです。。
いや、お互いの弱いところも変化も理解しつつ、過去のいろいろも飲み込みつつ、必要以上に詮索しない関係って素敵じゃないですか。
あと「委員長×か弱い少女」→「引きこもりコミュ障×めちゃ強コミュ障」とか可愛い×可愛いの変化じゃん??とか思ったり。妄想が捗ります。
琴子姉さんマジ可愛い。。。

ブログランキング・にほんブログ村へ

投稿者:

霜月 六花

おんな2人(人間一人と猫一匹)で極楽な生活を満喫中。 趣味の読書や映画の記録をゆるゆると綴っていきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です