大ファンの鈴木拡樹さん主演舞台のアルキメデスの大戦を観てきました。
第二次世界大戦、戦艦大和の建造を巡る海軍内の一週間の攻防戦を描く物語。2020年に上演予定でしたが、コロナ禍で公演中止となり2022年に改めて劇場で幕を開けました。
見終わった後、座席で長いため息を吐いてしまったのは終盤息を止めて見入ってしまったから。握りしめていたハンカチも汗ぐっしょりでした。
帰りがけに隣の席の若い男性お二人が「数学や戦争がテーマの舞台だから、客層男ばかりだと思っていた」と話していましたが、主演・助演の役者さんを見てください。女性に大人気な若手俳優ですよ。と心の中で突っ込んでしまいました。
■公式あらすじ
数学者の視点から第二次世界大戦を描くという、かつてない切り口の漫画『アルキメデスの大戦』は、『ドラゴン桜』や『インベスターZ』などユニークな作品で鋭く時代に斬り込んできた漫画家・三田紀房によって生み出された。戦艦大和建造の是非をめぐって繰り広げられる、息もつかせぬ攻防戦。2019年夏には映画化され、大きな話題となった。
この度、舞台化にあたって脚本と演出を手掛けるのは、読売演劇大賞をはじめ数々の演劇賞を受賞し、いま演劇界が最も注目する劇団のひとつ、劇団チョコレートケーキのクリエイター陣。独自の視点で史実に隠されたドラマを紡ぐ古川健の脚本と、骨太な作品の中に人間の心情を丁寧に描く日澤雄介の演出によって、2022年秋、舞台『アルキメデスの大戦』が劇場で幕を開ける。
■基本情報
観劇日:2022/10/1
原作 :三田紀房
舞台原案:映画「アルキメデスの大戦」
脚本 :古川 健
演出 :日澤雄介
出演 :鈴木拡樹、宮崎秋人、神保悟志、岡田浩暉
劇場 :シアタークリエ
■感想
原作漫画・映画ともに観ていないの状態での観劇です。コロナ禍で一度上演中止となりましたが、このたび改めての上演。幕が上がって本当に良かったです。スタッフや関係各所の努力の賜で感謝しかありません。
前述の通り、私は主演の鈴木拡樹さんのファンでして、彼と助演の宮崎秋人さんのストレートプレイを観たくて観劇を決めました。結果、チケット取れて良かったです。
数学者の櫂(鈴木拡樹)と海軍所属の田中少尉(宮崎秋人)の二人がバディとして動くのですが、性格は正反対の二人。皮肉屋で論理的、理論と数字を重視する不器用な櫂VS情に厚く日本軍人としての誇りを重視する田中。超絶天才型の不安定感と全力努力型の安定感のバディでもあります。その二人の対比と歩みがとても良かったです。二人ともベクトルは違えど同量の熱量を持ち、かつ目指す理想は同じ「戦争を起こさないこと」なんですよね。
一幕を見たところでどう着地させるのか気になっていたのですが、面白い。
最後まであの熱量を維持して集中を途切れず観客を引き込む様は流石の俳優陣だと思います。台詞劇好きなので個人的にもとても刺さる。
(初日だったからか、舞台の魔物に当てられたか、要所要所で皆様台詞を噛んでいらっしゃり珍しい姿を見れましたが、それも生物である舞台ならではでした)
扱う題材として終始重めのシリアスかと思いましたが、一幕はギャグやコミカルなシーンもありました。
その分、二幕は笑いを挟める場所はほぼありませんでしたが……。
ただ、一幕に挟まれる笑いが、櫂が巻き込まれていく軍部とか様々な人間の性質と対比になっていたのか? と観劇後時間がたってから思い考えさせられました。こう、映画も原作も見ていないのでわからないのですが、国や人の思想が狂っていく過程が丁寧に描かれていまして、恐ろしい。
<以下、ネタバレを含みます>
山本五十六と平山中将の思想もわかるんですよ。
玩具を持てば人間誰でも使いたくなりますし、圧倒的な希望が潰えれば人間諦めるだろうって夢を見ちゃうことも。そういう人間の闇が、正論の皮を被ってやってきて周囲を汚染していく感じ。あの調子で言われたら信じちゃいますもん。日本人らしいと言うのか、戦争だからと言うのか。
でも、現実世界でもいくらでもあり得て、いつだって日常に紛れてる。それが軍や国で発生すれば……というのは、隣国で戦争をしていて国内でも焦臭い話が出ている今の時代、我々国民も考え意識し過去を覚えていなくてはいけないことなんだよなと思います。
だからこそ、ラストの台詞と演出は少し呆気なく終わったように感じつつも重くのしかかるのですよね。
そしてラスト。1945年4月で終わるんですよ。
終戦までまだ4ヶ月もある中で、二人がどう自分たちの責任と向き合い、戦後どう生きて責任を負っていったのか。考えるだけで胃が痛くなるし心が重くなる。
いやでも山本五十六提督(神保悟志)・平山忠道中将(岡田浩暉)の怪演はとても良かったです。お二人の演技は引き込まれるし好きでした。
田中少尉と山本提督が向き合うシーンと、対となる櫂少佐と平山中将が話すシーン。どちらもすごく好きで、だからこそ辛い。空母を手に無邪気な表情で遊ぶ山本五十六提督の無邪気な笑顔。戦争に大義などなく、戦争のための道具にも大義はない。けれど数式、技術の粋は美しいと感じてしまう感情は否定できない。抗いようのない時代に必死に抗い、抗い、抗い続けた結果があれだったのだとしても、それは全てが本心だったのか?
考えさせられる舞台でした。あの熱量は板の上でしか感じられないため、お時間許す方は是非劇場に足を運んで頂きたいです。
感想からは外れますが、今回シアタークリエを初めて利用したのですが、あまり年齢層というか客層が宜しくないんですかね?私の気のせい・演目のせいかもしれませんが、年配の男性客が多い印象でした。
そして、ちょっとご年配の男性型のマナーがあまり宜しくない(何度スタッフに注意されてもマスクを外す・マスクなしで咳き込むなど)がいらっして、このご時世ちょっと心配になりました。
菅田くんが主演をしていた映画版も未見なので見てみたい。