【映画】LAMB/ラム

淡々と、静かに進む映画。
アイスランドの広大な大自然と、白夜のせいで昼夜も曖昧で、日によっては霧に囲まれる閉ざされた山が舞台のホラー。

■基本情報

公開日:2022/9/23
監督  :ヴァルディミール・ヨハンソン
脚本  :ショーン、ヴァルディミール・ヨハンソン
主演  :ノオミ・ラパス、ヒルミル・スナイル・グズナソン
配給  :クロックワークス

■公式あらすじ

山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア。
ある日、二人が羊の出産に立ち会うと、
羊ではない何かが産まれてくる。
子供を亡くしていた二人は、
“アダ”と名付けその存在を育てることにする。
奇跡がもたらした”アダ”との家族生活は
大きな幸せをもたらすのだが、
やがて彼らを破滅へと導いていく—。

■感想

映画『ミッドサマー』が好きな人は刺さるよ、と言われてアマプラで見ました。
『ミッドサマー』とは別方向で宗教的でホラーな作品ですね。
私は両方とも好きですが、人によっては好き嫌いが別れそう。
また『ミッドサマー』は割とわかりやすく宗教色やホラーな面や人の弱さなどの解釈ポイントを出してくれていたけれど、『lamb』は答えがより視聴者に委ねられている感じ?
見る人が持っている宗教的な知識や、鑑賞時の視点とか?

カルト宗教!因習村!因習村ならではの宗教儀式!
といったミッドサマー的なわかりやすさは無いですね。
(もちろんミッサマも細かなモチーフなどは知識が必要ですが)

閑話休題。
お話を『lamb』に戻すと、宗教観としてはキリスト教のようだけれど、私はあまり詳しくないのでその辺の細かなことは私は分からず。

ホラー部分は冒頭10分とラスト10分のみ。
それ以外はあくまでも淡々と霧深い山の中で、夫婦と半人半獣の幼子と犬と猫の物語。
淡々と、夫婦が子羊を我が子として受け入れていく様や、過去に無くした子どもの喪失感を癒やし新たな日常生活を過ごしていく。視聴者としては「なにかが起こりそう」という漠然としてた不安感や空気感だけが漂っている感じ。
不気味さの演出が上手い。台詞も少なく、陰鬱な雰囲気で人によっては生理的な気持ち悪さを感じるかも。

冒頭に現れるアダ(子羊)の父となる黒い男、ぱっと見た感じ「羊」では無く「山羊(悪魔)」に見えたのだけれど、最後のシーンを見ると「羊」なのかな。
山羊と羊の見分けかたが分からないので、そこからポヤポヤ。てっきり悪魔の子の暗喩なのかと思ってしまったけれど、神様の子と判断して良いのか……。
羊というと「神の子羊」とか「生贄の羊」あたりしか引き出しが無く、舞台がアイスランドなのでキリスト教ではなく北欧神話系かギリシャ神話系の神様なのかな?
(パンズ・ラビリンスのパンがギリシャ神話の半人半獣の神様だったかしら?)

ストーリーとしては、「因果応報」は仏教的だしちょっと違う気もする。
「罪と罰」かな。

娘を亡くした夫婦の元に、子羊を授けた神様。
母親は、子羊を奪われまいと子羊を探し泣き続ける母羊を殺すという罪を犯す。
罪を隠したまま、母親は子を慈しみ夫婦の中も改善し理想的な家族としての幸福を得る。
幸福もつかの間、罪を犯した償いとして神に罰として「夫」を奪われる。
(「母」羊を「妻」が殺した反転図式で、「父」羊が「夫」を殺す)
ラストは解釈分かれそうだけれど、「罰」をきちんと受け罪を償ったことで、新しい我が子がお腹に宿ったのかな?
その前のシーンとかを考えると。
罪と罰と、許しの物語。
ただ、許しを得たそのときに、共に子を育てる夫はいないのだけれど。

ラストシーンの直前、イングヴァルに教えられた山から家へ帰るための方法をアダちゃんが覚えていますように。
父親(神)に手を引かれて山に向かうアダが、イングヴァル(人間の父親)を見る視線の意味が悲しみでありますように。

アダちゃん可愛いんだよ。
つぶらな瞳で、声は聞こえないのだけれど両親とはちゃんと会話が成立している所とか。
ぽてぽて歩く感じとかダンスが好きな所もソーキュート。
めちゃかわです。

アダちゃん、「アダム」の女の子名なのかな。
羊は角が無いのが女の子だよね?
女の子だとすると、羊の処女懐胎で生まれたのは実はイエスでもアダムでは無く「イブ」だったのか?
山羊(サタン)が羊(マリア)にイブを産ませて、人(マリア)を狂わせ羊(マリア)を殺させ、夫(イングヴァル)を奪って山羊(サタン)と共に去っていく。なんて。
そう考えると、最後に残ったマリアのお腹に宿ったのは、何なんでしょうね?と思えてくる。
犬が殺されて、猫が残ったのも「魔女の使い」だから、なんて……。

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投稿者:

霜月 六花

おんな2人(人間一人と猫一匹)で極楽な生活を満喫中。 趣味の読書や映画の記録をゆるゆると綴っていきます。

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