【小説】木曜日にはココアを/青山美智子

ぶらりと立ち寄った本屋さんの店頭で、表紙のかわいらしいミニチュア写真とタイトルに惹かれて購入した一冊です。ここ数年、仕事が忙しく全く本を読めていない、何ならゆっくり本屋を覗くこともできていなかったので最近の作家さんにも疎く、久々にゆっくりと本屋さんをぶらぶらとしている中で見つけました。もう最近の人気の本もわからず、完全に表紙&タイトル買いです。これを気に読書を再開したいし、知らない作家さんの本も開拓していきたい……。

■公式あらすじ

川沿いの桜並木のそばに佇む喫茶店「マーブル・カフェ」。
そのカフェで出された一杯のココアから始まる、東京とシドニーをつなぐ12色のストーリー。卵焼きを作る、ココアを頼む、ネイルを落とし忘れる…。小さな出来事がつながって、最後はひとりの命を救う―。あなたの心も救われるやさしい物語。

■書籍情報
出版社 :宝島社文庫
著者  :青山美智子
発売日 :2019年8月6日
価格  :704円(税込)
判型  :文庫判
ページ数:224P
ISBN  :978-4-8002-9712-9

■感想

川沿いの小さな喫茶店「マーブルカフェ」を中心に、何気ない日常や人々が交わる12編の連作短編集。
街に暮らす人々の日常やそれぞれの思いが少しずつ繋がる、全体的にほっこりとするお話でした。
一編一編も短いので、ブランクの長い私にもすらすらと読みやすい一冊でした。

どのお話も好きなのですが、特に私のお気に入りは以下のお話です。

きまじめな卵焼き[Yellow / Tokyo]

キャリアウーマンで一家を支える朝美と、画家を目指している主夫の輝也。二人の幼い息子、拓海の三人家族。
仕事はできるが家のことは全くできない朝美に降りかかる大きな問題に、ある日突然夫に告げられた一つの言葉をきっかけに「今までの日常」が大きく変化してしまいそうな不安。
生真面目な朝美の悩みや葛藤、不器用なところが、なんとなく自分に似ている気がして感情移入してしまいました。
……私も教科書やマニュアルに書かれた通りにできないと不安になるので、朝美の気持ちは「わかるわ~」と大きく頷いて読んでいました。いえ、私は料理に関しては超絶適当なんですけれど。

半世紀ロマンス[Gray / Sydney]

結婚50周年、金婚式の記念にオーストラリアのシドニーに旅行に来た夫婦の、奥様が語る二人の馴れそめと惚気。
わたしゃ奥さんや旦那さんが、惚気を人に聞かせるお話好きなんじゃ。いいよいいよもっとちょうだいってなるんじゃ。みんなもわかるじゃろ。

カウントダウン[Green / Sydney]

「緑色」に魅せられ「自分の緑」を書く女性が、シドニーのボタニックガーデンで出会った青年とのひととき。
女性の生い立ちや抱えている思いに心が苦しくなるけれど、前向きな終わりに救われます。

恋文[White / Tokyo]

表題作の「木曜日にはココアを」と対となる一編にして、本書の最後を飾る一編。
マーブルカフェのいつもの席、いつもの時間に、いつものように手紙を書く女性。
ただ、いつもと違うのはその手紙の宛先。
今までのお話を読んでいるからこそ、の良さがあるので、是非順番通りに一番最後に読んで頂きたいです。
(私は本を最後から読む癖があるので笑。それでも十分に良さが伝わります)

ここで挙げたお話以外のどの話も読後感が良く、疲れた心にとても染みる。じんわり温まるホットココアのような一冊です。これから少し寒くなる季節に、ぴったりではないでしょうか?

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投稿者:

霜月 六花

おんな2人(人間一人と猫一匹)で極楽な生活を満喫中。 趣味の読書や映画の記録をゆるゆると綴っていきます。

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